「いらっしゃいませ」は、言わないで。
生まれも育ちも、ここ大内宿。11代目としてこの地を継ぎましたが、正直に言えば、若い頃は「何もない田舎」だと思って一度は外に出ました。30歳で戻ってきて初めて、先人たちが守り抜いてきたこの茅葺き屋根の風景が持つ、圧倒的な「凄み」に気づかされたのです。
だからこそ、ただ景色を見て「きれいだったね」で終わる場所にはしたくありません。お客様がもう一度、大内宿に帰ってきてくれるためには「あの店員さんと話して楽しかった」という体温のある思い出こそが、この場所で持ち帰っていただくべき最高のお土産だと私は思っています。
ウチの店には細かいマニュアルはありません。決まり切った「いらっしゃいませ」も禁止です。「よくきたなし〜」「今日は寒いなし〜」って、近所の人みたいに話しかけてください。方言?もちろん直さないでください。むしろそれが最大の武器。商品は二の次で構いません。あなたが楽しそうに話している姿そのものが、お客様を喜ばせるんです。
小さな集落ですから、地域特有の付き合いや、難しいことも正直ないとは言えません。でも、そうした「外の雑音」は、全部私が防波堤になって引き受けます。あなたは店という舞台の中で、安心して、のびのびと輝いていてくれればいい。
そして、何より家族を優先してください。例えばお子さんやご家族が体調を崩されたら、店がどんなに忙しくても「今すぐ帰って!」と背中を押しますから。雪道を越えてここまで通ってきてくれる。それだけで、私はあなたに感謝してもしきれないのです。